所得税の所得控除と住民税の所得控除は名称こそは一緒ですが、控除額が違うものがあります。
「確定申告書の控除額より住民税の納税通知書の控除額の方が低いから計算が間違っているのでは?」という疑問が良く出てきます。
確定申告書や源泉徴収票に記載されている所得控除は住民税の所得控除とは基本的には一致しません。
この記事では、所得税と住民税の所得控除の違いを比較し、計算方法について詳しく解説します。
所得税と住民税の所得控除額の比較
所得税と住民税では、同じ控除なのに控除の金額が同じものと違うものがあります。
所得税の所得控除金額で住民税を計算すると誤ってしまいますので注意しましょう。
所得税と住民税で所得控除額が同じもの
・社会保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除
・雑損控除
・医療費控除
これらの控除額は所得税と住民税で一致します。
所得税と住民税で所得控除額が異なるものとその控除額
控除の種類 | 所得税 | 住民税 | |
生命保険料控除 | 最高12万円 | 最高7万円 | |
地震保険料控除 | 最高5万円 | 最高2万5千円 | |
寡婦控除 | 27万円 | 26万円 | |
ひとり親控除 | 35万円 | 30万円 | |
勤労学生控除 | 27万円 | 26万円 | |
障害者控除 | 普通障害 | 27万円 | 26万円 |
特別障害 | 40万円 | 30万円 | |
特別障害(同居加算込み) | 75万円 | 53万円 | |
配偶者控除 | 一般 | 最高38万円 | 最高33万円 |
老人 | 最高48万円 | 最高38万円 | |
配偶者特別控除 | 最高38万円 | 最高33万円 | |
扶養控除 | 一般 | 38万円 | 33万円 |
特定 | 63万円 | 45万円 | |
老人 | 48万円 | 38万円 | |
老人(同居加算込み) | 58万円 | 45万円 | |
基礎控除 | 最高48万円 | 最高43万円 | |
寄附金控除 | 寄附金額-2,000円 | 住民税では 税額控除となる |
所得控除の計算方法
基本的には上記の表に記載されている控除額をそのまま使用します。
一部、計算が必要なものがありますので下記のとおり解説します。
生命保険料控除
支払った金額(控除証明書の金額)から、計算式に当てはめて控除額を算出します。
所得税の生命保険料控除の計算方法について
<旧生命保険料(一般)・旧個人年金保険料>
支払った保険料 | 控除額 |
2万5,000円以下 | 支払った保険料額 |
2万5,000円超~5万円以下 | 支払った保険料額×0.5+1万2,500円 |
5万円超~10万円以下 | 支払った保険料額×0.25+2万5,000円 |
10万円超 | 一律5万円 |
<新生命保険料(一般)・新個人年金保険料・介護医療保険料>
支払った保険料 | 控除額 |
2万円以下 | 支払った保険料額 |
2万円超~4万円以下 | 支払った保険料額×0.5+1万円 |
4万円超~8万円以下 | 支払った保険料額×0.25+2万円 |
8万円超 | 一律4万円 |
支払った生命保険料の種類・金額に応じて控除額の計算を行います。
住民税の生命保険料控除の計算方法について
<旧生命保険料(一般)・旧個人年金保険料>
支払った保険料 | 控除額 |
1万5,000円以下 | 支払った保険料額 |
1万5,000円超~4万円以下 | 支払った保険料額×0.5+7,500円 |
4万円超~7万円以下 | 支払った保険料額×0.25+1万7,000円 |
7万円超 | 一律3万5,000円 |
<新生命保険料(一般)・新個人年金保険料・介護医療保険料>
支払った保険料 | 控除額 |
1万2,000円以下 | 支払った保険料額 |
1万2,000円超~3万2,000円以下 | 支払った保険料額×0.5+6,000円 |
3万2,000円超~5万6,000円以下 | 支払った保険料額×0.25+1万4,000円 |
5万6,000円超 | 一律2万8,000円 |
地震保険料控除
支払った金額(控除証明書の金額)から、計算式に当てはめて控除額を算出します。
所得税の地震保険料控除の計算方法について
<地震保険料控除>
支払った保険料 | 控除額 |
5万円以下 | 支払った保険料額 |
5万円超 | 一律5万円 |
<旧長期損害保険料控除>
支払った保険料 | 控除額 |
1万円以下 | 支払った保険料額 |
1万円超~2万円以下 | 支払った保険料額×0.5+5,000円 |
2万円超 | 一律1万5,000円 |
「地震保険控除証明書」に記載されている保険料の種類を確認し、上表の支払った保険料に応じた控除額を算出します。
住民税の地震保険料控除の計算方法について
<地震保険料控除>
支払った保険料 | 控除額 |
5万円以下 | 支払った保険料額×0.5 |
5万円超 | 一律2万5,000円 |
<旧長期損害保険料控除>
支払った保険料 | 控除額 |
5,000円以下 | 支払った保険料額 |
5,000円超~1万5,000円以下 | 支払った保険料額×0.5+2,500円 |
1万5,000円超 | 一律1万円 |
配偶者控除
配偶者控除は納税者本人(扶養者)の合計所得金額に応じて控除額が異なります。
納税者本人の合計所得金額 | 所得税 | 住民税 | ||
一般 | 老人 | 一般 | 老人 | |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 | 33万円 | 38万円 |
900万円超~950万円以下 | 26万円 | 32万円 | 22万円 | 26万円 |
950万円超~1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 | 11万円 | 13万円 |
1,000万円超 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 |
配偶者特別控除
配偶者特別控除は、配偶者控除と同様に、納税者本人の合計所得金額に応じて控除額が異なるほか、扶養される側の合計所得金額に応じて段階的に控除額が変わってきます。
基礎控除
基礎控除は誰でも受けられる控除でしたが、令和2年分の確定申告から高所得者の基礎控除額が減額され、合計所得金額が2,500万円を超える場合には基礎控除額は0円となりました。
合計所得金額 | 所得税 | 住民税 |
2,400万円以下 | 48万円 | 43万円 |
2,400万円超~2,450万円以下 | 32万円 | 29万円 |
2,450万円超~2,500万円以下 | 16万円 | 15万円 |
2,500万円超 | 0円 | 0円 |
寄附金控除
寄附金控除は、数種類ありますが、もっとも馴染みがあるのが「ふるさと納税」かと思います。
ふるさと納税を「ワンストップ特例」を使用せずに適用するためには、確定申告を行う必要がありますが、確定申告を行った場合は所得控除として控除されます。
一方、住民税は、ワンストップ特例であっても確定申告であっても、所得控除ではなく税額控除となりますので、住民税については所得控除の適用はありません。
所得控除とは、所得から控除するものです。
まとめ
所得控除はいつくも種類があり、その多くが所得税と住民税で控除額が違います。
住民税の納税通知書や税額決定通知書、課税証明書などは住民税の控除額が記載されていますので、源泉徴収票や確定申告書とは控除額が異なります。
この記事を最後まで読んでいただけたなら、その違いはわかったと思います。
所得税と住民税の所得控除の違いをしっかり区別しましょう。
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