「毎年、会社から渡される年末調整の書類をなんとなく提出しているけど何のために使うのかわからない」
「毎年書いてるけど書き方を忘れてしまった」という方がほとんどではないでしょうか?
特に、令和2年分から年末調整に必要な書類が増えて複雑になったため、苦手意識が高い方も多いと思います。
この記事では、「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」を提出する意味や書き方についてわかりやすく解説します。
給与所得者の基礎控除申告書等とは
お勤め先から給与の受けている方が、年末調整を行う上で必要な書類の一つで、「給与所得者の基礎控除申告書」と「給与所得者の配偶者控除等申告書」と「所得金額調整控除申告書」の3種類の申告をまとめてするものです。
毎年、会社から11月頃に配布され、その年の最後の給与の支払いを受ける日の前日までに、給与支払者に提出するものです。
このように期限はありますが、実態としては、お勤め先から期限を言われますので、それまでに提出をすることになります。
この書類を提出しないと基礎控除・配偶者(配偶者特別)控除・所得金額調整控除が受けられないので注意してください。
給与所得者の基礎控除申告書とは
簡単に言うと基礎控除を受けるため及び基礎控除の金額を決めるための申告書です。
書類を提出しないと基礎控除が受けれなくなりますので、注意しましょう。
☆基礎控除とは
所得金額に応じ次の所得控除を受けることができます。
・2,400万円以下の方が所得税48万円、住民税43万円
・2,400万円超~2,450万円以下が所得税32万円、住民税29万円
・2,450万円超~2,500万円以下が所得税16万円、住民税15万円
・2,500万円超~が所得税・住民税0円
給与所得者の基礎控除申告書の書き方
給与所得者の基礎控除申告書の記載箇所は下画像の赤枠部分です。
(1)の収入金額
その年の年間の給与収入額を記載します。
この給与収入額は、毎月の給与収入と賞与(ボーナス)を含めますが、交通費は除きます。
会社で把握しているのに自分で書くの?と思われる方も多いと思いますが、会社から指示がない限りは自分で記載する箇所になります。
給与収入が1,095万円を超えない場合は、金額のズレがあっても影響はありませんので、1,095万円以下であればだいたいの金額の記載で問題ありません。
(1)の所得金額
(1)の収入金額から所得金額を計算し、記載します。
所得金額は下表に当てはめて算出します。
給与収入額(A) | 給与所得控除後の金額 (所得) | 備考 | ||
1 | ~ | 550,999 | 0 | 左記の数値が所得 |
551,000 | ~ | 1,618,999 | (A)-550,000 | |
1,619,000 | ~ | 1,619,999 | 1,069,000 | 左記の数値が所得 |
1,620,000 | ~ | 1,621,999 | 1,070,000 | 左記の数値が所得 |
1,622,000 | ~ | 1,623,999 | 1,072,000 | 左記の数値が所得 |
1,624,000 | ~ | 1,627,999 | 1,074,000 | 左記の数値が所得 |
1,628,000 | ~ | 1,799,999 | (A’)×0.6+100,000 | (A’)=(A)÷4(千円未満切り捨て)×4 |
1,800,000 | ~ | 3,599,999 | (A’)×0.7-80,000 | (A’)=(A)÷4(千円未満切り捨て)×4 |
3,600,000 | ~ | 6,599,999 | (A’)×0.8-440,000 | (A’)=(A)÷4(千円未満切り捨て)×4 |
6,600,000 | ~ | 8,499,999 | (A)×0.9-1,100,000 | 1円未満の端数は切り捨て |
8,500,000 | ~ | (A)-1,950,000 |
(2)所得金額
ここには、給与所得以外の所得金額を記載します。
例えば、年金の所得であったり、副業の雑所得、ほかにも営業所得、不動産所得等の所得などです。
収入ではなく所得を記載する箇所ですので、ご注意ください。
(1)と(2)の所得を合計し、基礎控除を算出
「あなたの本年中の合計所得金額の見積額」に(1)と(2)の所得の合計を記載します。
次にその下の表の「〇 控除額の計算」に算出した所得金額の合計を当てはめて、「基礎控除の額」に48万円、32万円、16万円のいずれかの金額を記載します。
なお、「区分Ⅰ」については、配偶者控除の計算で使用する箇所になります。
給与所得者の配偶者控除等申告書とは
簡単に言うと配偶者控除及び配偶者特別控除を受けるため申告書で、さらにその金額を決めるためのものです。
給与所得者の配偶者控除等申告書の書き方
給与所得者の配偶者控除等申告書の記載箇所は下画像の緑枠部分です。
基本事項の記載
配偶者の氏名や生年月日などを記載しましょう。
配偶者の所得金額等の記載
基礎控除申告書と同様に「配偶者の」給与収入、給与所得、給与所得以外の所得を記載します。
控除額を算出
所得金額の合計で「区分Ⅱ」の判定を行い、①~④を記載します。
次に、基礎控除申告書の所得金額の合計から「区分Ⅰ」の判定を行い、A~Cを記載します。
「区分Ⅰ」と「区分Ⅱ」の判定が終わったら、それぞれの判定を基に「控除額の計算」の表に当てはめて控除額を算出します。
配偶者特別控除であれば、配偶者の所得に応じて細かく控除額が分けられています。
控除額が算出できたら、区分Ⅱの①と②は「配偶者控除の額」に控除額を記載し、
区分Ⅱの③と④は「配偶者特別控除の額」に控除額を記載します。
所得金額調整控除申告書とは
簡単に言うと給与収入が850万円を超えるの方が特定の条件を基に控除を受けるための申告書です。
つまり、給与収入が850万円以下の方は記載する必要はありません。
所得金額調整控除申告書の書き方
所得金額調整控除申告書の記載箇所は下画像の青枠部分です。
所得金額調整控除の要件について
所得金額調整控除を受ける要件は4つあり、当てはまる要件があればどれか一つに✅をつけます。
※給与収入が850万円超であることは絶対に必要な要件です。
1.あなた自身が特別障害者
自分自身が特別障害者であれば要件に該当するため要件欄に✅します。
また、「★特別障害者」欄に障害の状態又は交付を受けている手帳などの種類と交付年月日、
障害の程度(障害の等級)などの特別障害者に該当する事実を記載します。
なお、「扶養控除等申告書」に記載している特別障害者と同一の場合には、「扶養控除等申告書のとおり」に✅をつけるだけで問題ありません。
2.同一生計配偶者が特別障害者
同一生計配偶者が特別障害者であれば要件欄に✅します。
また、「☆扶養親族等」に氏名等の必要事項を記載し、「★特別障害者」欄にも必要事項(1.あなた自身が特別障害者の記載方法と同様)を記載します。
3.扶養親族が特別障害者
扶養親族が特別障害者であれば要件欄に✅します。
また、「☆扶養親族等」に氏名等の必要事項を記載し、「★特別障害者」欄にも必要事項(1.あなた自身が特別障害者の記載方法と同様)を記載します。
4.扶養親族が年齢23歳未満
23歳未満の扶養親族がいる場合に要件欄に✅します。
また、「☆扶養親族等」に氏名等の必要事項を記載します。
☆「23歳未満の扶養親族」の間違いやすい点
税法上の扶養にしていなくても所得金額調整控除を受けることができます。
例えば、夫婦それぞれが850万円超の収入で、23歳未満の子どもが一人いる場合
税法上の扶養は夫か妻のいずれしか扶養控除を受けることはできません。
しかし、所得金額調整控除は夫も妻もそれぞれ受けることができます。
つまり、年末調整の際に夫も妻も同一の子の氏名を記載し、所得金額調整控除を受けることができます。
まとめ
「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」について解説しました。
この様式には、最大で3つ申告書を記載するものになります。
それぞれ記載しないと控除を受けることができませんので、ご自身に該当するものは忘れずに記載するようにしましょう。
コメント