年の途中で転職(就職)した方がいた場合、前職で働いていた分の給与を今の会社で合算して年末調整を行わなければなりません。
源泉徴収票に記載しなければならないことを詳しく解説し、また、記載漏れがあった場合に起こる問題についても解説します。
※年末調整を行う経理や人事担当向けの内容です
年末調整で前職分を合算するときの書き方
源泉徴収票に記載が必要な内容を5ヶ所に分けて解説します。
支払金額
支払金額の欄には1年間の収入金額を記載しますが、前職の収入と現在勤めている会社の収入を合算して記入します。
前職の分については、対象者から源泉徴収票を提出してもらい、その源泉徴収票の支払金額がその年の収入となります。
同じ年で何度も転職をしている対象者であれば、すべての源泉徴収票を提出してもらい、すべて支払金額を合算する必要があります。
自分の会社の分は該当する年の1月~12月までに支給した給与が対象となります。
あくまでもその年に支給したものが対象となります。
給与所得控除後の金額
給与所得控除後の金額はいわゆる「所得」の金額を指します。
給与所得控除後の金額は、計算式を用いて算出するものになります。
この計算式に当てはめる金額は支払金額(収入金額)となりますが、1年間の支払金額を基に計算を行うことになります。
つまり、前職分がある場合は、前職分と現在働いている会社の収入額をすべて合算してから計算することとなります。
前職分で計算、現在の会社の収入で計算のようにそれぞれ計算してしまうと、誤った計算になってしまうので注意してください。
源泉徴収税額
前職分の源泉徴収票に「前線徴収税額」の記載がある場合、その方はその分だけ所得税を支払っていることになります。
前職分と現在の会社で天引きした所得税を合算して、最終的な源泉徴収税額を算出する必要があります。
社会保険料等の金額
前職分の源泉徴収票に「社会保険料等の金額」の記載がある場合、その方が前職で働いていた時に支払った(天引きされた)社会保険料があるということです。
年末調整の際には、前職分と現在の会社で天引きした社会保険料、また、対象者から別の社会保険料の支払いについて領収書等の提出があった場合、すべてを合算する必要があります。
摘要
すべての計算が終わった後は、源泉徴収票の適用欄に次の必要事項を記入する必要があります。
(2)他の支払者のもとを退職した年月日
(3)他の支払者が支払った給与等の金額
(4)徴収した所得税及び復興特別所得税の合計額
(5)給与等から控除した社会保険料の金額
正しい書き方をしない場合の影響について
前職分がある場合について、前述した事項を適切に計算・記入する必要があります。
適切に記入しない場合、税金の計算が適切にできず、脱税にもなりかねません。
適切な計算について
前職分を含めて適切に計算を行わないと、対象者の方が還付される税金を貰えなかったり、税金を納め足りておらず、追徴金などで余計に多く支払いをしなくてはならないことになります。
全ての収入を合算してから、給与所得控除後の金額(所得)を出すことや前職分の社会保険料・源泉徴収税額を含めて適切に計算を行う必要があります。
摘要欄の記載漏れについて
計算が完璧にできていたとしても、摘要欄の記載漏れがあると翌年度住民税の算定に影響が出ることがあります。
例えば、前職分を含めて計算し、摘要欄に何も書かなかった場合、前職分は含まず、その会社のみの収入や社会保険料で年末調整を行ったとみなされます。
【具体例で解説】
前職分を含めた収入額:500万円
うち前職分:300万円
この場合、年間の収入は500万円として税金の計算がされますが、住民税は500万円+300万円=800万円の収入として課税される可能性があります。
会社は市町村に「給与支払報告書」を提出しますが、それは前職分の会社と現在働いている会社のそれぞれから提出されます。
単純にそれぞれの会社から給与が出ていると計算される可能性があるため、800万円の収入があるとして住民税が課税される場合があります。
それを防ぐために、摘要欄に前職分の会社名や支払金額などを記載することになります。
この記載内容を確認し、市町村では合算された金額と判断し、500万円の収入として計算されることになります。
まとめ:前職分を合算するときの書き方
前職分を合算するときの書き方としては、「支払金額」、「給与所得控除後の金額」、「源泉徴収税額」、「社会保険料等の金額」、「適用」を適切に記載する必要があります。
計算の順番、記載漏れがないように気をつける必要があります。
また、計算誤りや記載漏れによって起こる不利益を把握することで、より慎重に事務を進めることができると思います。
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