「定額減税で損をする」、「恩恵がない」、
「定額減税での落とし穴」
と言われていますが、実際は、住宅ローン控除を受けている人は給付金(調整給付)があるため、損をするものではありません。
定額減税で住宅ローン控除の人が損すると言われる理由
2.定額減税について
3.定額減税後の住宅ローン控除について
住宅ローン控除について
住宅ローン控除は、家などをローンで購入した場合に、その年のローンの年末残高(購入価格の場合もあり)の1%や0.7%分などを税額控除として、所得税から引くことができます。
この住宅ローン控除が適用されるのは、年末調整の時や確定申告の時です。
つまり、その年の収入や控除などが決まり、最終的な所得税を算出して、その所得税から控除するものとなります。
年末調整や確定申告を行った結果、住宅ローン控除で多くの還付金が発生する方が多いです。
定額減税について
所得税:3万円
住民税:1万円
扶養している方がいればその分加算されます。
定額減税後の住宅ローン控除について
住宅ローン控除が少なる具体例
定額減税がない場合と定額減税がある場合での住宅ローン控除の控除のされ方を見ていきましょう。
定額減税がない場合の住宅ローン控除
毎月天引きされる所得税:2万円(年間で24万円)
住宅ローン控除を除く年末調整後の所得税:20万円
住宅ローン控除額:20万円
定額減税がある場合の住宅ローン控除
毎月天引きされる所得税:2万円(年間で24万円)
住宅ローン控除を除く年末調整後の所得税:20万円
住宅ローン控除額:20万円
定額減税:6万円
(24万円-定額減税6万円=18万円)
住宅ローン控除の人の定額減税のされ方
住民税における住宅ローン控除
所得税の税額より住宅ローン控除の方が大きい場合、余った住宅ローン控除は住民税で控除されます(限度額あり)。
【条件】
毎月天引きされる所得税:2万円(年間で24万円)
住宅ローン控除を除く年末調整後の所得税:15万円
住宅ローン控除額:20万円
住民税:20万円
【住民税から住宅ローン控除を引くことのできる限度額】
所得税の課税所得金額の5%(97,500円が限度)
※居住年が平成26年~令和3年までは課税所得金額の7%(136,500円が限度)
定額減税がある場合の住民税における住宅ローン控除
【条件】
毎月天引きされる所得税:2万円(年間で24万円)
住宅ローン控除を除く年末調整後の所得税:15万円
住宅ローン控除額:20万円
定額減税:6万円
住民税:20万円
定額減税のない場合とある場合の住宅ローン控除の比較
定額減税がない場合と定額減税がある場合の、住宅ローン控除の使われ方を解説しましたが、結果的には以下のようになりました。
・定額減税がない場合
所得税:24万円の還付金、住民税:5万円の減税
・定額減税がある場合
所得税:18万円の還付金、住民税:5万円の減税
住民税の減税額は5万円と同じですが、所得税は定額減税がある場合の方が6万円少なくなりました。
この6万円は、まさに定額減税の6万円分です。
定額減税分を還付金として考えると、定額減税は事前に受けているので、所得税の還付金は24万円となり、定額減税のあるなしでは、同じ効果となることがわかりました。
ただし、定額減税があるのに同じ効果しかないのであれば、損をしていることになります。
これが住宅ローン控除のある方が損すると言われる状況です。
しかし、冒頭でも説明したとおり損をするわけではありません。
それは、給付金(調整給付)があるからです。
住宅ローン控除の人の調整給付のされ方
調整給付があることで住宅ローンがあっても損をしない仕組みになっています。
調整給付とは
まずは、調整給付について簡単に説明します。
調整給付は、定額減税で引き切れなかった所得税と住民税を給付するものです。
例えば、所得税が年間1万円で定額減税が3万円だった場合、2万円が給付金となります。
調整給付の計算方法
所得税の調整給付金の計算方法は、数パターンあり、自治体の運用で変わります。
まず、調整給付は令和6年分の所得税を計算した結果、定額減税をしきれない分の給付となるのが前提です。
しかし、調整給付は令和6年の所得税が確定する前に給付を行うことになります。
よって、令和5年分の所得税の状況で令和6年分と見立てて計算を行うことになります。
令和5年分の所得税の状況は、自治体の持っている情報や国が開発する計算ツールで算出します。
あくまでも、見込みで令和6年分の所得税を算出し、定額減税額と比較することで調整給付額を算出します。
一方、住民税については、令和5年度課税の住民税を使用するため、令和6年の5月や6月に税額が決まります。
よって、正しい住民税の額と定額減税額を比較して調整給付額を算出します。
住宅ローンがある場合の調整給付について
住宅ローン控除で所得税が全額還付された場合で考えていきます。
住宅ローン控除で所得税が全額還付されている場合では、所得税は0円となります。
所得税が0円であれば、定額減税は1円もできないこととなるため、定額減税分が調整給付の金額となります。
定額減税が3万円なら調整給付が3万円、定額減税が6万円なら調整給付が6万円です。
このような方は、まず、6月の給与や賞与で定額減税されたうえで、さらに給付金が貰えることになります。
2重取りしているようにも思えますが、結局は、年末調整や確定申告の際に住宅ローン控除で損する分を給付としてもらっているだけですので2重取りにはなりません。
つまり、この調整給付があるため、住宅ローン控除があっても損をしないことになります。
まとめ
定額減税と調整給付の制度はかなり複雑で、ここに住宅ローン控除が入るとより複雑になります。
しかし、ひとつひとつ計算をして紐解いていくと内容がわかったのではないかと思います。
そして、定額減税で住宅ローン控除のある人が損をするといった話は間違っているということも確認できたのではないでしょうか。
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