生命保険の満期返戻金と解約返戻金の申告方法と税額について解説!

基礎知識
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「生命保険が満期なってお金が振り込まれるけど、どうやって申告するの?」
「生命保険を解約して、解約返戻金が振り込まれるけど申告は必要なの?」

生命保険の満期返戻金と解約返戻金は、返戻金の金額とこれまで積み立ててきた(支払っていた)金額によって申告が必要な場合と申告が必要ない場合があります。

この記事では、申告の要否と申告のやり方、また、申告した場合に発生する税額について詳しく解説します。

 この記事は数千件以上の確定申告書(住民税申告書を含む)の作成経験と住民税の課税経験のある「とらまね」が解説します。
 この記事を読んでわかること
・生命保険の満期返戻金と解約返戻金の申告方法
・生命保険の満期返戻金と解約返戻金の税額
・生命保険の満期返戻金と解約返戻金の申告の要否

生命保険の満期返戻金と解約返戻金の申告方法

生命保険の満期返戻金と解約返戻金を受け取った際には、基本的に確定申告が必要になります。

確定申告の手続き方法

生命保険の満期返戻金と解約返戻金はどちらも申告の方法は同じですので、満期返戻金を受け取った場合の申告方法で解説します。

必要書類

確定申告を行う際には、次の必要書類を用意する必要があります。

・満期返戻金の支払調書(確定申告用の支払いのお知らせ等)
・マイナンバーカード、または、マイナンバーの通知カード+身分証明書
・給与や年金の源泉徴収票(給与や年金収入がある場合)
・給与や年金以外の収入がある場合、その収入がわかるもの
※満期返戻金の支払調書は生命保険会社により名称が変わりますが、確定申告用などと書かれています。

確定申告書の記載箇所

確定申告書第二表の記載場所は以下の赤枠部分です。
 
一時所得は赤枠部分の「〇総合課税の譲渡所得、一時所得に関する事項」に必要事項を記載します。
・所得の種類:「一時」と記載します。
・収入金額:実際に受け取った金額を記載します。配当金も受け取っていたら配当金の金額も合わせて記載します。
・必要経費等:今まで支払ってきた保険料を記載します。既払込保険料などと記載があると思います。
・差引金額:上記の収入金額から必要経費等を引いた金額を記載します。
※収入金額500万円、必要経費等400万円の場合差引金額は500万円-400万円=100万円となります。
確定申告書第一表の記載場所は以下の赤枠部分です。
 
赤枠部分の収入金額等の「一時」と所得金額等の「総合譲渡・一時」に金額を記載します。
第二表で記載した金額を参考に第一表を記載していきます。
収入金額500万円-必要経費等400万円=差引金額100万円を第二表に記載した場合
この差引金額100万円から特別控除50万円を引いた金額が第一表の収入金額に記載する金額になります。
※一時所得は50万円の特別控除が認められています。なお、差引金額が50万円未満の場合、その差引金額が特別控除の上限額となります。
・収入の一時:50万円
・所得の一時:25万円
所得の金額は収入に記載した金額の2分の1の金額を記載します。
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生命保険の満期返戻金と解約返戻金の税額

上述した「確定申告書の記載箇所」である程度計算方法を解説していますが、改めて計算方法をまとめると次のとおりです。
①収入金額-必要経費等=差引金額
②差引金額-特別控除(50万円)=一時収入(確定申告書第一表の収入に記載する額)
③一時収入÷2=一時所得(確定申告書第一表の所得に記載する額)
実際の数字を当てはめて所得税と住民税の計算を行ってみます。
【事例1】
満期返戻金の額:600万円
支払い済み額:420万円
控除:基礎控除(所得税:48万円、住民税43万円)
①600万円-420万円=180万円
②180万円-50万円=130万円
③130万円÷2=65万円
(所得税の計算)
65万円(所得)-48万円(控除)=17万円(課税所得金額)
17万円×5%(税率)=8,500円
8,500円×102.1%(復興特別所得税)≒8,600円
※所得税は8,600円発生します。
(住民税の計算)
65万円(所得)-43万円(控除)=22万円(課税所得金額)
22万円×10%(税率)=22,000円
22,000円-2,500円(調整控除)+5,000円(均等割)=24,500円
※住民税は24,500円発生します。
【事例2】
満期返戻金の額:800万円
支払い済み額:200万円
控除:基礎控除(所得税:48万円、住民税43万円)
①800万円-200万円=600万円
②600万円-50万円=550万円
③550万円÷2=275万円
(所得税の計算)
275万円-48万円=227万円
227万円×10%-97,500=129,500円
※税率10%の場合97,500円を引きます。
129,500円×102.1%≒132,200円
※所得税は132,200円発生します。
(住民税の計算)
275万円-43万円=232万円
232万円×10%(税率)=232,000円
232,000円-2,500円+5,000円=234,500円
※住民税は234,500円発生します。
事例1と事例2で一時所得でどれだけ税金が発生するかを計算してみました。
しかし、この計算では一時所得のみの計算であり、このほかに、給与所得や年金所得もあるといった場合があるかと思います。
給与所得や年金所得などの一時所得とは別の所得がある場合、一時所得と合算して計算する必要があります
例えば、給与所得と一時所得がある場合で給与を年末調整をしている場合、給与で基礎控除などの控除を使用していますので、単純に「一時所得(2分の1した後の金額)」に税率を乗じることで税額の概算額を算出できます。
ただし、所得税は累進課税制度であるため、給与所得に一時所得が加算されることで税率が上がる可能性がありますのでご注意ください。
【事例3】
(源泉徴収票記載事項)
支払金額:300万円
給与所得控除後の金額:202万円
所得控除の額の合計額:120万円
源泉徴収税額:41,800円
(一時所得)
満期返戻金の額:800万円
支払い済み額:200万円
事例2で計算したとおり一時所得は275万円です。
給与所得控除後の金額が給与の所得となりますので、このそれぞれの所得を合計して計算します。
202万円+275万円=477万円
477万円-120万円=357万円
357万円×20%-427,500円=286,500円
286,500円×102.1%≒292,500円
年間の所得税の合計が292,500円となりました。
年末調整で一度所得税の精算をしており、41,800円(減徴収税額)分は支払済みであるため、確定申告時の支払いは292,500円-41,800円=250,700円となります。
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生命保険の満期返戻金と解約返戻金の申告の要否

「生命保険の満期返戻金や解約返戻金を受け取ったときは必ず申告を行わないといけないのか?」というと、そうではありません。
申告をしなくてもいいパターンを所得税と住民税に分けて解説します。

所得税

1.受取金額より支払金額の方が大きい
支払金額の方が大きということは、所得(利益)がありませんので、申告をする必要はありません。

2.所得より所得控除の方が大きい
所得より所得控除の方が大きい場合、所得税は発生しませんので申告をする必要はありません。
例えば、所得が100万円あったとしても、扶養控除や基礎控除などの所得控除が100万円以上であれば所得税は発生しません。
※一時所得以外の所得を含めます。

3.年末調整している給与所得者で一時所得が20万円以下
特例制度として年末調整が行われている場合で(給与収入2,000万円以下)、給与以外の所得が20万円以下の場合、申告をすることが不要とされています。

4.年金収入400万円以下で一時所得が20万円以下
特例制度として年金収入が400万円以下でその他の所得が20万円以下の場合、申告をすることが不要とされています。

住民税

1.受取金額より支払金額の方が大きい
支払金額の方が大きということは、所得(利益)がありませんので、申告をする必要はありません。

住民税は基本的に1円でも所得が発生していれば申告しなければなりません。
所得税のように申告不要制度はありませんので、所得税で申告不要であっても、所得(利益)が出ているようであれば住民税の申告をする必要があります。
※確定申告をした場合は、住民税申告をしたことになるので、改めて住民税申告をする必要はありません。

まとめ

生命保険の満期返戻金は、それなりに所得(利益)が発生するので申告をして税金を納めなくてはならないことが多いですので、申告を忘れないようにしましょう。

申告を忘れると数年後に税務署から申告するよう通知が届くかもしれません。支払期限(通常返戻金の受け取った年の翌年の3月15日)を過ぎると延滞税などが発生します。

生命保険の解約返戻金については、所得(利益)が発生しない場合もありますので、申告が必要かどうかを判断する必要がありますので、本記事を参考に判断をしてみてください。

申告が必要がどうかを迷ったり不安であったりする場合は、市区町村に確認を取ると良いでしょう。
税務署では所得税の申告が必要かどうかしか判断できないため、所得税と住民税の申告が必要かどうか判断できる市区町村に確認した方が無難です。

確定申告が不要だとしても住民税申告が必要であることに注意して、申告の要否を判断しましょう。

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