日本赤十字社(日赤)に寄付(活動資金である会費や寄付金)を行った場合、所得税では所得控除、住民税では税額控除を受けることができます。
なお、災害義援金として寄付を行うと「ふるさと納税」として扱われます。
「いくら寄付すれば控除対象になるの?」「どれくらい税金が安くなるの?」「限度額はあるの?」「どうやって寄附金控除を受けるの?」
初めて寄付をした方や初めて寄付を考えている方はいろんな疑問があるかと思います。
この記事では、日本赤十字社に寄付を行った場合の様々な疑問を解消するために、詳しく解説していきます。
日本赤十字社への寄付とは?
日本赤十字社は、主に災害が起きた時に医療救護や救援物資の配分など様々活動を行っていて、その活動に賛同する場合、任意に寄付をすることができます。
寄付は、赤十字社各支部の窓口で寄付できるほか銀行やクレジットカードでも行うことができます。町内会でも集められていることがあります。
寄付と会費
単純に寄付を行えば寄付金として扱われますが、年額2,000円以上の寄付で会員となることができます。
会員となった場合の寄付は、「寄付」ではなく「会費」と呼ばれますが、寄附金控除を受けれることに変わりはありません。
会員になると何がある?
・年2回程度、情報誌が送付される
・日本赤十字社の役員と代議員を選出することができ、自分も選出されることがある
・年間の業務及び収支決算の報告を受けられる
・業務の運営に、代議員を通して意見を言える
日本赤十字社にいくら寄付したら控除の対象になる?
寄附金控除を受けるには2,000円を超える寄付が必要になります。これは日本赤十字社への寄付に限らず、どこへ寄付をしても同じ要件になります。
寄附金控除の計算をする際に、寄付した金額から2,000円を引いた金額が控除の対象となるといった計算式になっているため、2,000円を超える寄付が必須となります。
【寄附金控除計算例】
(例1)寄付した金額5,000円の場合
5,000円-2,000円=3,000円
※3,000円が寄附金控除額
(例2)寄付した金額1,500円の場合
1,500円-2,000円=△500円
※マイナスはないので、寄附金控除額は0円となります
日本赤十字社に寄付した場合の税金の軽減額
日本赤十字社に寄付した場合、所得税では所得控除、住民税では税額控除を受けることができます。
所得控除と税額控除について
所得控除は所得から引く控除、税額控除は税額から引き控除です。
【計算例】
①給与収入
②給与収入-給与所得控除=給与所得
③給与所得-所得控除=課税所得金額
④課税所得金額×税率-税額控除=税額
所得税と住民税は上記の順番で計算をしていきます。
所得控除は③のタイミングで控除し、税額控除は④のタイミングで控除します。
所得控除は控除してから税率を乗じるため、金額ほど税額が安くなりませんが、税額控除は税額から引く控除なので、その金額分税金が安くなります。
所得税
寄付した金額から2,000円を差し引いた金額が所得控除となります。なお、寄付した金額がその年の総所得金額等の40%を超える場合、総所得金額等の40%が限度になります。
所得税では、所得控除のため税率が高い方がより恩恵を受けることができます。
【計算例1】
寄附金5,000円、税率5%の場合
5,000円-2,000円=3,000円
3,000円×5%×102.1%≒153円
この場合、所得税が約153円安くなります。
※102.1%=復興特別所得税
【計算例2】
寄附金5,000円、税率20%の場合
5,000円-2,000円=3,000円
3,000円×20%×102.1%≒612円
この場合、所得税が約612円安くなります。
【計算例3】
寄附金1,500円、税率10%の場合
1,500円-2,000円=△500円
マイナスにはならないため、控除額は0円
よって、所得税に影響はありません。
住民税
寄付した金額から2,000円を差し引いた金額が税額控除となります。なお、寄付した金額がその年の総所得金額等の40%を超える場合、総所得金額等の30%が限度になります。
住民税の税率は一律で10%ですので、所得が高い人でも、低い人でも受けられる控除は変わりません。
【計算例1】
寄附金5,000円、税率10%の場合
5,000円-2,000円=3,000円
3,000円×10%=300円
この場合、住民税が300円安くなります。
【計算例2】
寄附金10,000円、税率10%の場合
10,000円-2,000円=8,000円
8,000円×10%=800円
この場合、住民税が800円安くなります。
【計算例3】
寄附金1,500円、税率10%の場合
1,500円-2,000円=△500円
マイナスにはならないため、控除額は0円
よって、住民税に影響はありません。
寄付したのに思ったより税金が安くならなかった!?
所得税と住民税で共通して言えることは、払っている税金が少ない場合、寄附金の控除額が少なくなることがあるということです。
例えば、非課税の方であると寄附金控除は受けられません。
寄附金控除は所得税も住民税も税額を下げるための控除ですので、そもそも税額がない(非課税)の場合は下げる税額がないため結果として、寄附金控除は受けることはできません。
同じような考えで、税額が低い方も思ったより控除が受けられないことになります。
支払うべき税額が寄附金控除額より低かったら、支払うべき税金額を限度として控除されることになるからです。
住民税は、お住いの都道府県・市区町村で条例により寄附金控除の対象となる法人を指定しています。
つまり、条例に日本赤十字社が記載されていなければ、控除を受けることはできません。
☞事前にお住いの市区町村の条例を確認するか、電話等で確認しておきましょう!
※所得税は、日本赤十字社は寄附金控除の対象とされていますので、問題なく控除を受けることができます。
災害義援金について
地震や津波、大雨などで大きな災害が行った場合は、赤十字を通して災害義援金として寄付を行うことができます。
災害義援金は、被災都道府県が設置する義援金配分委員会へ全額を送ることになっており、被災地の方の生活支援に役立てられます。
この災害義援金は、通常の赤十字の寄付とは異なり、ふるさと納税として寄附金控除を受けることができます。
ふるさと納税として寄附金控除を受けると、それぞれの限度額を超えなければ、寄附した金額の2,000を超えた金額が所得税と住民税で合わせて控除されます。
所得税の控除額の計算
(ふるさと納税額-2,000円)×所得税の税率×102.1%
※ふるさと納税額は、総所得金額等の40%が限度
住民税の控除額の計算
〇基本控除
(ふるさと納税額-2,000円)×10%
※ふるさと納税額は、総所得金額等の30%が限度
〇特例分
(ふるさと納税額-2,000円)×90%-所得税の税率
※特例分は住民税の所得割の20%が限度
少し計算が複雑なので、あまり大きい金額の寄付をしなければ、2,000円を超えた金額が所得税と住民税で合わせて控除されると思っていればいいと思います。
寄附金控除の申告(申請)方法
日本赤十字社に寄付を行っただけでは寄附金控除は受けられません。所得税と住民税に分けて申告方法を解説します。
また、会社で行っている年末調整でも寄附金控除を入れることはできないので注意しましょう。
確定申告
毎年2月16日~3月15日(還付申告は年明けからスタート)の期間で確定申告書を提出できますが、寄附金控除を受ける際には確定申告が必要になります。
日本赤十字社へ寄付を行った場合は「受領証」を発行してもらう必要があります。受領証は希望しなければ貰うことができないので、希望して取得をすることとなります。
なお、ゆうちょ銀行の振込用紙の半券は、受領証の代わりになるので捨てずに保管しておきましょう。
確定申告の際の最低限の持ち物
〇マイナンバーカード
※マイナンバーカードがない場合
通知カードや住民票の写しと運転免許証や被保険者証などの身元確認書類
〇源泉徴収票(給与や年金収入の方)
寄附金の受領証と確定申告に必要な書類が揃ったら、税務署や市区町村役場の申告会場等で申告を行います。
なんとなくやり方がわかる方や少し勉強してやってみようという方は「e-tax」をお勧めします。
申告会場は混雑しており、待ち時間が長いのでご自宅などで申告ができると時間の短縮になります。
スマホがあれば源泉徴収票がカメラで読み込めて、簡単に作成することができます。
もちろん、何もわからない状態で申告会場に行って、教えてもらいながら行っても大丈夫です。
住民税申告
住民税の申告は基本的にする必要はありません。
確定申告書を提出することで住民税の申告も提出したことになるからです。
では、住民税申告はいつ必要になるのでしょうか?
住民税申告書だけを提出する場合は、確定申告書の提出が必要ないときになります。
【確定申告書の提出が必要ないとき】
・所得税の計算をした結果、還付にも追徴にもならない場合
・確定申告の申告不要制度に該当する場合 など
住民税申告を行うには、お住いの市区町村の税務課の窓口で行います。
持っていくものは確定申告を行う場合と同様になります。
なお、確定申告期間中は特設会場で申告を受け付けている市区町村が多いので、お住いの市区町村のHPなどで確認しましょう。
特設会場で申告受付を行っている場合、税務課の窓口では受け付けてもらえないことが多いですので、注意しましょう。
まとめ
日本赤十字社へ寄付した場合は、所得税では所得控除を、住民税では条例で指定されていれば税額控除を受けることができます。
税金の控除を目的として寄付をしている訳ではないという方も、もちろんいますが、国が認めている制度なので積極的に使っていきましょう。
コメント